それですら忘れるようにしていた。



バスケットボールに触れる手に、力が入る。



ねぇ、楠木。
やっぱり私…バスケが好きだ。



もう一度、やりたい。



パスを出して、ドリブルして、ゴールを目指して。
決めた時はみんなで喜んで。



勝った時も笑顔で喜んで。
負けた時はみんなで悔しがって泣いて。



反省して次に活かす。
バスケを通して私は、たくさんのことを学べた。



頑張ること、仲間と協力すること。



一生懸命何かに夢中になるのがあんなにも楽しかったこと。



「……好き、だなぁ…」



バスケットボールに涙の雫がこぼれ落ちる。
だけどこの涙は、悪い意味じゃない。



自分でわかる。
もう、次こそは立ち止まりたくないから。



明日の朝、楠木に会ったら一番に言おうと思う。
『バスケが好き』だと。



そして、『もう一度、バスケがやりたい』と。