「うーさむ」
「これ羽織っとけ」
屋上のベンチ座ると、レオは自分が着ていたモッズコートをツバサに投げつけるように渡した。
「ありがとう、ございます」

数秒お互いに黙った後、レオが口を開いた。
「あー……桜、顔見せなくて悪かった。でも、俺だってわかんなかったんだよ。今まで、こんなに人を好きになったの初めてだったから」
「……じゃあ、神崎さんは本当に僕の事が……」
「そーですよ。悪かったな俺なんかに好かれちまって」
「嬉しいですよ」
「……は?」

「僕だって、神崎さんのこと好きなんですから」

「はあ!? んじゃ俺は俺のことが好きなやつに嫌われてると思いながらキスして勝手に距離置いてたってことかよ!? ダッセェ!」
「その通りですね」
「うるせえ置いてくぞ!」
「すみませんでした」

「っく、ははは!」
「あははっ!」
初めて、レオの笑顔を見た気がする。
「桜」
「はい?」
「これから、よろしくな」
「……え?」
「えってなんだ」
「僕が、神崎さんの彼女になれるんですか?」
「お互い好きなんだから当然だろ」
「でも、僕は、僕には時間が……」
「は? 時間?」

「……僕の余命はあと、3ヶ月しかないんです。それでも神崎さんは、」
「レオ」
「え?」
「余命3ヶ月だろうと1週間だろうと、俺はお前の彼氏になる。そう決めたんだ。ツバサ」
「じゃあ、僕は、僕はまだ、生きていていいんですか」
「当たり前だろ。最後まで全力で生きろ。俺はツバサの隣でそれを手伝う。いくらでも抱き締めてやる。だから、もう泣くな」