信じられなかった。

「あれ。忘れた?俺のこと。」

目の前にはたしかにあのときのままの薫がいる。

「忘れたというか。ほんとにあなたのこと
知らないの。ごめんなさい。」

彼女は電車に逃げるように乗った。

僕だけ時間が止まったような気がした。

彼女を乗せた電車は静かに動き出した。