「で、今体を壊して入院していると」

「ええっ」

「家族に迎えに来てほしい、早く日本に帰った方がいいと病院のスタッフが言っていた」

 数日前から、何度かかかってきていたのは国際電話だったのか。どうりで見覚えのない番号だったはずだ。

 現地の病院に入院しているだなんて……ついこの前電話をしたときは、元気そうだったのに。
 どくんどくんと、心臓が不穏に動き回る。

「早く日本に帰った方がいいってことは……命にかかわる病気だってことですか。早くしないと日本の土を踏めずに死んでしまうってことですか」

「そこまでは言っていなかった。俺もハンガリーは学生時代に少し滞在しただけだから、微妙なニュアンスまでは聞きとれていないかもしれない。運悪く、その病院には日本語通訳がいないらしい」

 怖い。お父さん、いったどんな病気になっちゃったの。

 全然知らない異国の地で父親が死んでしまうかもと思うと、吐き気に似た感覚を覚える。内臓全部が縮み上がっているみたい。

「とにかく、現地にお父さんを迎えに行くしかない」

 昴さんはテーブルの上にさっきとったメモを置く。そこには、住所と電話番号らしきものが。