ライブの日、和希一家の住む隣の家で遅めの朝食を食べていると、チャイムが鳴った。
誰なのか確認せずに、和希は玄関のドアを開ける。そして入ってきたのは、二人の男性だった。
「朝食俺の分もあるか?」
「あるよ、ちょっと待ってて」
一人はそう言って丸いバッグをリビングの端へ置いた。背の高い美しい顔立ちの男性だった。
もう一人は一人目より少し背の高い、ギターケースと長方形のケースを持ち、マスクをしているなんだかミステリアスな男性だった。
「君が和希の従妹だね? 桜ツバサちゃん」
「はじめまして。桜です」
「よろしく。俺は菅絢斗。こっちの怖い顔のが神崎レオ」
神崎レオと言われたその男性は、ギターケースと長方形のケースを床に置き、ツバサの正面に座った。
「レオ、挨拶」
「……よろしく」
「はじめまして」
「アヤさんトーストチーズ乗せる?」
「頼む」
レオは無言でテレビのチャンネルを回している。
「あの、お二人はどうして和希とバンドを?」
ツバサが尋ねると、絢斗はレオの隣に座り、言った。
「あれ、和希言ってなかったの? 俺もレオも、桜ちゃんと和希と同じ高校の三年なんだよ。軽音部でレオはギター、俺はドラムやってたんだけど、和希に誘われて学校外で活動始めたんだ」
「そうだったんですね。あの、僕楽器には疎いんですけど、あの丸いバッグはもしかしてスネア、ですか?」
「そうそう。んで、レオの持ってた長方形のケースがマイクね。レオは今ギターボーカルだから」
「なるほど」
「はいアヤさんご飯」
「ありがとう。レオは要らないのか?」
「要らねぇ」
「そんなんだからそんなに細いんだよ」