「ねぇねぇ」


こころちゃんが急に私の耳元に顔を寄せる。


「……理玖んちに住むことになったんでしょ?」


コソコソっと周りに聞こえない小さな声でそう言った。


えっ⁈

ど、どうしてそれを!


何の内緒話かと思ったら、こころちゃんは突拍子もなく理玖くんの名前を……。

私は驚いてまじまじとこころちゃんを見つめてしまう。

こころちゃんは顔を離すと「へっへーん!」と、得意げににっと白い歯を見せて笑った。


「理玖から聞いたんだ! 桃香が下宿?するって話」

「え……」

「あぁ! あたしね、理玖の幼なじみなの」


理玖くんの、幼なじみ……。

あ、だから知ってるんだ……。


「どもぉー!」


ぼんやりと納得していると、またまた背後から賑やかな声。

振り返ると、そこには無造作ヘアの髪色の明るい男の子。

こころちゃんを押しのけ割り込んできた。