「あっ……あのっ」


背後を気に掛けつつ、真横の理玖くんを見上げる。

前を歩く生徒や、急ぎ足で通り過ぎていく生徒、周りから受ける視線が痛すぎる。


「あ、あの、手……」


肩をすくめてボソッと呟くと、理玖くんの手がやっと私を自由にした。


「ここ入って右。で、階段二階まで上がってすぐ左」

「えっ?」

「教員室、行くんじゃないわけ?」

「あ、そっか……はい」


いきなり何の説明が始まったかと思えば、理玖くんは唐突に職員室までの行き方を道案内。

それだけを言い、さっさと昇降口へと入って行ってしまう。


「……どこのクラスになるかわかんないけど、まぁ、頑張って」


ふらりと足を止めて振り返り、他人行儀な笑みを浮かべた。


「あっ、え……」


置いてきぼりをくらい、ぼさっと突っ立つ。


そっか……

理玖くんと同じクラスとは限らないもんね……。


――キーンコーンカーンコーン…。


校内にチャイムが鳴り渡り、私は慌てて学校内へと駆け込んだ。