「…………」

「…………」



もう、この場にいたくない。


さっきまで崩れてしまいそうだった表情が、今の女の人の声を聞いて、一瞬でグシャッとつぶれた。



「ごめん、急に電話かかってきて。さっきひなが聞いたことだけど……」


「……っ、も、もういい……っ」



正直、今のわたしには聞くことはできない。
だから、榛名くんが話しているのを遮った。


気づいたら、瞳からポロポロと涙が溢れてきていた。



「ひな?」


わたしを心配そうに見ながら、
手を伸ばしてきて、そっと頬に触れてきた。


だけど、わたしは、その手を振り払ってしまった。



「い、今は榛名くんと話したくない……っ。近づいてこないで……っ」



そうやって、優しい手つきで、チサさんにも触れているのかと思うと、もう胸が張り裂けそうなくらい苦しくて、痛い……。


自分の中で、こんな感情があるなんて知らなかった。

知りたくもなかった。



目の前にいる榛名くんを押し返して、
脱衣所をあとにした。