毎日、駅の改札に着くまでは彼女との電話の時間。



夜22時近くだというのに、恋人同士で溢れ返っている街に一人で歩いていても寂しくはない。



……そりゃ、いつかは恋人になって、二人で肩を並べて歩きたいけどさ…。



今は、一番近い場所に居られるだけで幸せなんだ。



「……ごめんな、もう電車に乗るから。また明日、おやすみ〜っ」



電話の終わりは常に『おやすみ』



毎日、毎日、恋人同士のように一日に別れを告げる。



……これで満足してるだなんて、波多から見たら情けない意気地無しの男なんだろうけど…。



好きな女に他の男の相談されたら、それ以上、何も言えなくないか?



今はただ彼女の恋路を応援すべく、気持ちを抑えつつ、今に至る。



……矢野セン、手強そうだけど…



捕まえられるかな?



秋から冬へと変わりつつある街の景色。



制服のジャケットだけでは寒いや……。