先輩の言う通りだ。私、格好悪すぎ。あんなに強気でいじめに対抗したのに、肝心の仕事で居眠りとかありえない。

「土日で気持ち入れ替えとけよ。じゃ、また東京で」

 レシートを持ち、怒った先輩はさっさとラウンジを後にしてしまった。もちろん、私のトニックウォーターをおごってくれる気なんてなく、経費で落とすつもりだろう。

 失敗したなあ……。

 不甲斐ない自分自身にがっくりと肩を落とす。

 最近色々なことがありすぎたとはいえ……ああ、もういいや。やってしまったことは仕方ない。先輩の言う通り、土日で心を入れ替えて月曜からまた頑張ろう。

 トニックウォーターを一口飲み、ホテルをあとにする。カウンターで預けておいたキャリーケースを受け取り、重い足取りで外に出た。

 タクシーで駅まで出て、そこからは電車で実家に帰る。のろのろとギャラリーの入口を開けると、奥のカフェスペースからおばあちゃんが出てきた。

「おかえり」

 昨夜は電池が切れたおもちゃみたいだったおばあちゃんが、笑顔で出迎えてくれる。それだけで、体中から力が抜けた。