「お願いだから…
 もうやめてください。
 今アナタとココにいるのは
仕事をするためです。
だから今目の前の事に集中してください」


アタシ達の関係は
今はもうそれ以上でも
それ以下でもない。


結局。
アタシのこの一言のせいか
彼はそれ以上この話題に触れる事はなく
なんともイヤな空気を残したまま
初日の打ち合わせを終わらせたのだ。

先行きが不安でしかないんですが…。



「どっと疲れたな…」


静かなマンションの廊下を
あいかわらずスーパーの袋をぶら下げて
1人寂しく家路に着く。

“寂しい”とか言ってる辺りが
1番虚しいな。


「煌月んち
 今日カレーなんだ…」


すっごく美味しそうな匂いが
外までしてくる。

そりゃぁ隣の部屋なんだから
当たり前か。


「彼女の手料理のカレー…
 煌月、羨ましいヤツだな。
 アタシもお邪魔して
 ご飯ご馳走になりたいなー」


と、もうほぼ嫌味を零しながら
誰もいない自分の部屋へと入るのだった―――