クマのぬいぐるみを抱えてニコニコと答える娘の頭をなでる。

 どうやらお目当ての恋バナにすっかりと目が覚めたようである。

 こうなると意地でも寝ないことを知っている。

 その様子に再び苦笑すると口を開く。

「これはね、むかーしの話なんだけど。」

「むかし?」

「そう、むかーし。」

「どれくらいむかし?」

「んー。十二、三年前かな。」

「おおむかしだねー」

「そう。ある大学に大人しい女の子と不思議な男の子がいたんだけどね…」

 時計を見ると二十二時を回ったところだ。

 まだまだ時間はたくさんある。

 今日は娘にサービスするとしよう。