作り笑顔を浮かべた顔が引きつる。おばあちゃんを安心させようとしても、自分自身が不安でうまくいかない。

「そんなわけにはいかないでしょ。あなたには仕事があるんだから」

「いざというときは辞めるよ。おばあちゃんの介護も、ギャラリーも、私がやるから……」

「美羽も子供じゃないんだから、ひとりでそんなにできるわけないことくらいわかるでしょ。私は今から介護施設を探しておくから、そこに入れてくれればいい。あなたは自由に、自分のやりたいことをやらなきゃダメ」

 胸が軋んで、錆びたドアが開くような音を立てているような気がした。やかんがシュウシュウと蒸気を吹き出す。立ち上がらないとと思うのに、体が動かない。

 役立たずな私の代わりに、おばあちゃんが立ち上がり、ゆっくり歩いていった。背後で火を止める音、湯呑を出して急須にお湯を淹れる音がのん気に聞こえてくる。

 どうして。どうして。どうしておばあちゃん、そんなに見事に吹っ切っちゃうの。私は家族のためにこの家を残そうと努力していたのに……。

「おばあちゃんは美羽の負担になりたくないの」

「負担だなんて思ってない」