ダイニングの照明は、廊下と同じキャンドル型のライトが使ってあった。

 ただ、廊下のように一灯ではなく、スワロフスキークリスタルが煌めく豪奢なシャンデリアになっていたが。

 洞穴をくぐってたどり着いたラスボスの宮殿って感じだな、と思いながら、芽以は大きなダイニングテーブルに逸人と並んで座っていた。

 オレンジ色の灯りに照らし出されながら、供される食事はとても美味しかったが。

 ひとつ、困ったことがあった。

「そうなのよ。
 この間、芹沢さんの奥様がね」

 富美の金持ち仲間の話を聞きながら、芽以は心を遠くへ飛ばしていた。

 困ったお客さんを前にしたときのように。

 ちょっとついていけないかったからだ。

 どうも、日向子の手前、そういう話をしているようなのだが、日向子は特に姑の自慢話は聞きたくないらしく、同じく心を遠くに飛ばしているような目をしていた。