「……なんだ、ほぼ百人一首って」
と言うと、聖が、

「二枚足らないんだ」
と笑いながら、逸人が手にしていたタオルを取って、洗面所に持っていってくれた。

「逸人くんが入ったら、勝負にならんだろう」

 まあ、私と呑もう、と逸人は芽以の父親に誘われる。

 芽以たちが翔平と、ほぼ百人一首をやるのを眺めながら、ダイニングテーブルで、芽以の父と酒を酌み交わす。

 ……子どもにも容赦ないな、こいつら、と思いながら。

 誰もわざと負けてやったりしないので、翔平は悔しがっては泣きわめき、
「もう一回やるーっ」
と暴れているが。

 みな、それを笑って眺めている。

 鍛えられてるな、翔平……と思っていると、芽以の父がまた、酒をそそいできた。

「さあ、呑んで。
 ああ、この間、お年賀でいただいたのもあった」
とまた、立ち上がる。

 どうも、さっきの聖の発言により、酔いつぶれさせようとしているようだ、と思いながらも、芽以の父からの酒なので、全部受けた。