私は迷わないように昨日と同じルートを歩き、無事博物館に到着すると、時間を確認した。

時計は約束の時間の5分前を指している。到着するまでの道や博物館前に彼らしき人は見当たらなかったので少し不安に思いながら、そっとドアを開けて博物館に入った。



ロビーのようなスペースに彼の姿はない。
とりあえず展示をみよう、と私は博物館の奥に入った。


数々の発明品のレプリカのようなものが展示され、偉人の写真が描かれたパネルでコーナーが仕切られている。

私は出入口すぐにあったパネルの一面を読み終わり、裏面を読もうとまわった。



『うわぁっ!』

パネルの裏側に人がいるとは、しかも例の彼がいるとは思わず、幽霊をみたように驚いてしまった。

彼は熱心に見ていたパネルから顔をそらして、私の方をみた。

「あれ?そっちにいたのか!全然気づかなかった!!」

あわあわしながら、こくこくと頷く私と対照的に彼はかなり楽しげだ。


一つ一つの展示を見ていく中で、気づいたことがあった。
彼と自分の見るペースが同じだ。
私は博物館や科学館で説明文をしっかり読むのが好きだ。しかし友達と行くと置いてきぼりになってしまうし、家族と行けば遅い!と文句を言われる。


まさか、合わせてくれているのだろうか、そう思って彼に聞いてみた。


『私こういう展示見るの遅くて友達とはぐれたりするんだけど…』

彼は笑いながら「あるある」と頷いてこういった。

「いや、俺もそうなんだけど、お前、見るペース一緒だわ、最高…あ、まって、名前は?…あっ、てかアドレスも聞いてなかった…良かったら、だけど教えて欲しい…」

アドレスを聞くところで急に自信無さげになる彼と、妙なタイミングがツボに入り、笑いをこらえている間に、スマホの画面は彼の名前を写し出した。