昨日とひとつ違うのは、課長が私より少し早く来て、既に席に着いていることだ。誰も上司の前で理不尽なことは言わない。松倉先輩も、課長までは洗脳していないようだ。

「あ、あのう、それ、私がもらいます……」

 昨日は皆に何か言われていたのか、何も話さなかった派遣さんがおそるおそるといったふうに近づいてきた。ボブヘアで幼く見える彼女を、私は見降ろす。

「どうして? あなただって忙しいんでしょう」

 派遣さんひとりじゃ大変だから。昨日はそう言われた。嫌味で攻撃された派遣さんは肩をすぼめて小さくなる。

「大丈夫よ。ここの先輩たちは仕事の出来る人ばかりだから」

 昔から言うでしょう。いじめをする者ももちろん、黙って見ていた人も加害者なのよ。立場上社員に逆らえなかったのはわかるけど、必要以上に庇う必要も感じない。

「どうしても手が回らないときは、ちゃんと自分で、あなたに声をかけてくれるはず」

 嫌味を込めながら、書類を返却していく。受け取らない者には、デスクに叩き付けた。

「なにかあったの? 横川さん」

 一触即発の空気を感じたのか、課長が声をかけてきた。