ふらりと立ち上がると、自分の目に涙がにじんでいた。

 死んでたまるか。ここで私が死んだらおばあちゃんはどうなるの。

 ちょっと頭打ったくらいで死なないことは理解している。けど、これから出勤するには無理やりに自分を鼓舞することが必要だった。

「熱はない。では会社に行こう。私は画家志望の学生じゃない。立派な社会人なのだから!」

 有名な女性ばかりの歌劇団の男役っぽい。自分の声を聞いてそう思った。



 出社すると、またもや私のデスクの上に書類の山ができていた。チェックすると、またもや他人さまの仕事が押し付けられたらしい。松倉先輩がにやにやしているのが見えた。

 いつまでも泣き寝入りすると思うなよ。昨日は意地になって頑張り方を間違えたけど、今日からの私は違う。戦うんだ。

 私は机の上の山をがしっと掴んで持つと、タイトスカートを履いているにも関わらず、大股で歩いた。

「これ、置くところ違っていますから」

 付箋を貼った相手のところに、ひとつひとつ返却。先輩たちは呆気にとられた顔の者もいれば、敵意剥き出しでこちらをにらむ者もいた。