「いや、さっきマズい血って言ってたから。たぶん私の血はマズいと思うよ? 性格悪いし根性ねじ曲がってるし優しくないし」


「……それがお前の自己評価?」


「うん」
 

黎は顎から手を離して、私の頭をぽんぽんとした。


「はずれだな、それは。真紅はいいにおいがしてうまいよ」
 

……血の味の評価なんてされる人生、あるんだろうか。


「……黎がゲテ食いなんじゃなくて?」


「お前……自分のこと何て言い方すんだよ」
 

さすがに呆れた声を出された。


「つっても、俺は真紅のストーカーじゃねえし、真紅のことは何も知らない」


「知ってたら刑務所」


「俺は有罪確定なのか」
 

拘置所ではない。


「まー、だから? 真紅のこと教えてくれないか?」
 

また、背中には銀の月。光を背にしたその姿が、微笑みかけてくる。