ケータイ小説 野いちご

蒼の花と荒れる野獣


「…いいだろ?Beast」

男は間髪を入れずに。

「ダメだ」

「え、ダメなの?」


「お前、俺が許すと思ってるのか?」


「思ってるから言ってるんだけどな」


「俺には、千夏(ちなつ)以外必要ない」


「お前は、千夏ちゃんの帰りを待ってるよな。…もう、帰ってくるか分かんねえのに」

半ば呆れたように綾は頭を振った。

千夏?

一体誰のことだろう?


だけど、それよりあたしには言わなければならないことがある。


「ちょっとまって」


「なんだ」


「あたし、姫になんかならないけど」


姫っていう制度はよくわからないけど、要はプリンセスっていうことだ。

プリンセスなんて、あたしには似合わない。

古傷に塩を塗るような行為は、やめてほしい。

彼らが気づいていなくても、分かっていないとしても。


人は傷ついている時がある。


彼らに悪気がないのは分かっている。


だからこそ、余計に傷つくのだ。


責めることが出来ないのだから。

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