遅い時間なので、逸人がホットミルクを出してくれ、芽以は厨房にある木の丸椅子に腰掛け、それをいただいていた。
「来週、パクチー専門店を此処にオープンするつもりだ」
正面に腕組みして立つ逸人はそんなことを言ってきた。
だから……、嫌いなんですよね? パクチー、と芽以は思う。
「既に、店の看板を見て、問い合わせも何件か来ている。
手応えは悪くない」
いや、だから、嫌いなんですよね? パクチーと、心の中で繰り返している芽以には、おかまいなしに逸人は言ってきた。
「そして、軌道に乗ったら、人里離れた場所に店を移そうかと思ってるんだ」
待ってください、なにを言ってるんですか。
流行りとは言え、ただでさえ、需要の少なそうなパクチー専門店を山奥に持ってってどうしようというんですか。
サルがパクチー食べてくれるんですか。
クマさんがパクチー食べてくれるんですか。
クマさん、流行りなんて気にしないので、素直にゲーしますよ。