「残念だが、お前とは結婚できないことになった」

 クリスマスイブの夜。

 仕事終わりに待ち合わせ、美味しくインド料理など食べて、イルミネーションの輝く街を歩いていたら、突然、幼なじみの相馬圭太《そうま けいた》がそんなことを言い出した。

 杉原芽以《すぎはら めい》はちょっと状況についていけずに立ち止まりそうになる。

 ん? 誰と誰が結婚できなくなったって?

 一瞬、誰か友だちの話かと思ったのだが、圭太は、はっきりと、『お前とは』と言ったようだった。

「え……、私と、誰が?」

「俺が」

 貴方と私が?

 ……そもそも私たち、結婚する予定などあったでしょうか? と芽以は思ったのだが、圭太は足を止め、大真面目な顔でこちらを見ている。

「だから、お前、逸人《はやと》と結婚しろ」

 ……なんだって?