『こんな国、私が作りたかった国ではない』


下町に住む、どんなことにでも耐えてきた民の子孫は増えるべきだと、黎祥は考えている。


けれど、腐り切った貴族の子供は、もう要らない。


黎祥は自分の子供はいらない、そう、考えていた。


何故ならば、自分の身体には腐り切った皇族の血が入っている。


あの母親の血は受け継ぎたくも……後宮の女を抱いて生まれた子など、未来が知れている。


何のために、駒を増やさなければならない?


串焼き素麺屋の女将が言っていたことは、的を得ている。


やはり、下町のものは皆、賢い。


皇族や貴族のように、甘い汁をすすって生きてきた訳では無いからか、この未来の行く末を、誰よりも正確に見固めている。


そう考えていると、執政の仕方がわからなくなって、自分の目で下町を見るために極秘で降りてきて、そこで、殺されかけて。


『お前のせいで……っ!』


それらは、黎祥が断罪した先帝達の残し種であった。


斬り殺すこと可能だった。


けれど、このまま、身を委ねれば……自分は楽になれるのではないかという思いも、確かにあった。


それならば、死んだ方がいいと。


誰にも望まれないなら、と。


望んでくれている人間が、自分を信じてついてきてくれた皆がいることを知っていたのにも関わらず、自分は一瞬でも、その考えを抱いてしまった。


辺境でも、多くの人間を殺した。


でも、"そういうこと”とは、何か違ったのだ。


ここでは、黎祥の言うことはすべて、"王”としての力を持ってしまう。


そんな重いものを、黎祥は背負いたくなかった。


身体から、力が抜ける。


その時。