ケータイ小説 野いちご

コーヒーに砂糖とミルクを注ぐ時

涙を流したのは何年ぶりだろう。

眠れない夜。誰かの温もりを感じたいと思った。



今日は閉店の日ということもあり、多くのお客さんで朝から賑わっていた。

「寂しいよ〜」

「ここのナポリタン、おいしかったよ!」

「結婚おめでとう!」

常連さんからはそんな言葉を言われ、私は「ありがとうございます」と微笑むを作るしかできない。

本当は結婚なんてしたくない。カフェも閉店させたくない。家を出ても私に自由なんてなかった。ずっと鎖で繋がれたままだった。

カラン、コロン。

ベルが鳴り響き、ドアの方を向くと、赤い花の大きな花束が見えた。

「雪さん!」

入ってきたのは美桜さん。ポインセチアの花束を持っている。

「美桜さん!たしかお仕事では……」

「抜けてきました!」

そう言って、美桜さんは笑う。その笑顔を見て、ああ彼女は幸せなんだと実感させられる。

「この花束、もらってください。よくおいしい紅茶やケーキを食べさせてもらったお礼です」

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