「まさか、それで帰る気かよ?」
「え? うん。それがどうかしたの?」
ちゃんと薬箱は守ってるし、他も完璧なはず。
特に問題は無いはずだが。
どうして止められたのかわからず、翠蓮は首を傾げる。
そんな翠蓮の動作に、益々、苦い顔になった祥基は、
「自分は?」
と、尋ねてくる。
なるほど。
止められたのは、それが理由か。
「自分のことも、ちゃんと保護しろ」
バサッと被せられた、新たな防具。
「雨に濡れたくらいで、風邪引かないよー」
「そういう問題じゃねーだろ。ほら、傘」
昔から、翠蓮の兄の位置に立ち、翠蓮のする行動に気をかけてばっかりの心配性の祥基は、翠蓮に色々なものを持たせて。
「風が強いし、帰るなと言いたいが……お前は帰る気満々だしな。気をつけろよ」
「うん」
「送ろうか?」
「近いから大丈夫よ。ありがと」
頭から布を被り、勿論、背中に背負う薬箱も保護して、傘を差す。
外は風が強くて、鳴っている雷の音を聞きながら、翠蓮は何とか外へと歩き進む。
正直、祥基の家から翠蓮の家まで大して遠くないのだが、心配性の祥基を雑に扱うと後が面倒なので従った。
振り返ると、変わらず、祥基はこちらを見ていて。
大丈夫よ、と、翠蓮は笑いながら、手を振った。