「……お前は、馬鹿か?」


「そんな顔で、言わないで。祥基」


雨が上がって、三日。


黎祥が翠蓮の家に来て、三日。


おばさんの用事で訪ねてきた祥基は、黎祥の存在を認めた瞬間、翠蓮をとっ捕まえた。


「はぁ……馬鹿としか言えねぇ……何してんだ?お前」


「困った人に手を差し伸べるのは、当然のことでしょう。何も悪いことはしていないと思うのだけど」


「いや、あの男は……」


祥基は大きな溜息をつき、前髪を掻き上げる。


その時。


「翠蓮、話し中すまない。洗濯物、取り込んだのだが」


「お、ありがとう。黎祥」


「他に、何かすることはあるだろうか」


「そうね……って、大怪我しているんだから、少しは休んでおきなさい。あとは、私がやっておくから」


黎祥が取り込んだ洗濯物を受け取って、翠蓮がそう言ったけど、


「いや、世話になっている以上、何かしないと気が済まないんだ」


と、黎祥は何かしたくてたまらないそうで。


「じゃあ、買い物に行ってもらおうかな」


翠蓮からしても、正直、男手があることはとても大助かりである。


「分かった。しかし、外に出るのなら、何か、頭に被るものが欲しいのだが……」


何を言っても、首を縦に振る黎祥。


買い物も承諾してくれた黎祥は、どこか不安げにそう言った。


「被るもの?外套でいい?」


翠蓮が尋ねると、


「助かる」


と、黎祥は微笑む。