「そっか」



彼はそれだけ言い、静かにガトーショコラを食べ始めた。


昔とは違って、詳しくは聞いてこない。


たぶんわたしから話すのを待ってくれている。


でも、これ以上話すと泣いてしまうと思い、わたしはスカートのひざのあたりをぎゅっと握ってこらえた。



しばらくわたしたちの間にだけ沈黙が漂っていたけれど。


優にぃはわたしの皿に手を伸ばし、崩れかけのミルクレープにフォークを入れ、1口ぱくりと食べた。



「あ、これ美味しいじゃん。あと俺食べていい?」



残念ながら感情とスイーツは別物だ。


これめちゃくちゃ美味しいし、気持ちが落ち着いたら残りをゆっくり食べようと思っていた。



きっと、これは優にぃのいじわるな優しさだ。



「ダメ! これわたしの!」



慌てて皿を取り戻すと、今日一番の笑顔で優にぃは笑った。