季節は梅雨。
 
 ふと顔を上げて窓の外を見ると、雨脚が強くなったように感じる。
 
 
 大学の美術科の学生である白石水帆は石膏像と描きかけのカンバスを前にフランスパンを齧っていた。

「あーーもーー!また雨やーん。カンバスよぼよぼやし、サイアクー。飽きたー。」

 横で文句を言っているのは同級生の菊池杏だ。

 彼女の声は静かだった教室に響いた。

 残っていた何人かの同級生が彼女の愚痴にクスクスと笑う。

 そんな彼女の前には真っ白なカンバスが立て掛けられている。

「え。全然進んでないじゃん。」

 水帆が杏のカンバスを覗くと、杏は机に突っ伏す。