匠は俺が聞く前に、ルイに食い下がっていた。

『いやいや、支社長。お言葉ですが、当社には、フランス語が話せるスタッフはいないかと?』

『何言ってるんだ?さっき、ここまでちゃんと案内してくれたんだ。ちょっと試したくて、イジワルしたけど、ちゃんと分かってたよ、彼女』

『 彼…』
『彼女って本当にここのスタッフか?』

彼女って誰だと、匠が聞く前に俺はルイに問いただしていた。

『制服って言うのかい?それを着た女性だったけど』

制服と聞いて、総合職なのか、そんな人間がここにいたと?
俺と匠は、頭を捻った。

『受け付けの女性ですか?』

俺に言葉を制された匠も負けていない、話を割り込んで聞いてきた。

『いや違う。わざと途中で降りたから、確か5階だったよ』

ルイが、イジワルしたと言っていたが、また訛りのある話し方でもしたんだろう。
それを使い分けたとなると、使えるぞ。
一体誰だ…


5階…
総務がある所か、そんな話聞いた事がないな。前の専務からも、社長からも、もちろん一番ここの人間を把握している匠からも…

誰だ…

「失礼します」

考え込んでいる俺を置いて匠が、部屋を出て行った。