あれ?

聞こえなかったのかな?

周囲はざわざわして、複数の人たちで賑わっている。うん、きっと聞こえなかったんだ。

そう思って深くは考えず、校門をくぐって上靴に履き替え、蓮と別れて教室へ向かう。

教室の中は騒がしくて、半数以上のクラスメイトがきていた。真っ先に目がいくのは、私の隣の水野君の席。

水野君はすでにきていて、以前と変わらずイヤホンをして机に突っ伏して寝ている。

夏休み中、何度も連絡しようと思ったけど、迷惑かもしれないと思うとできなくて。どうしているのかとか、毎日何をして過ごしているのか、とても気になっていた。

水野君のことを考えていると、会えないことが寂しくて、会いたくて、早く夏休みが終わればいいのにって何度も思った。

そんなことを思う日がくるなんてないと思っていたのに、恋をすると変わるんだね。

誰かに会いたくてたまらなくなるなんて、こんな気持ち知らなかった。

ゆっくり歩いて自分の席へと向かう。前の席の皐月はまだきていないようだ。

次第にドキドキと大きく鳴り始める鼓動。松野神社のお祭り以来だから、なんとなく緊張する。

極力音を立てずに椅子を引いて、カバンを机の上に置く。すると気配を感じ取ったのか、水野君がムクッと起き上がった。