ケータイ小説 野いちご

この作品のキーワード

生徒会長時給850円!

夜宵君に占ってもらい、しばらく彼と談笑していると、ある女子生徒の声が聞こえた。

「あ、あの! ぜひ占ってもらってもいいですか!?」

振り返ると、女子3人が恥ずかしそうに夜宵君を見ていた。

「どうぞどうぞ!」

夜宵君がそう言うのと同時に、私も席を立ち、そろそろ教室を出ようとした。しかし、3人のうちの1人に、声をかけられた。

「か、会長さん! 会長さんはカケ×ミナについて、どう思いますか!?」
「……ゴホン!! カケ×ミナ!?」

思わずむせてしまった。カケ×ミナって、あの2人だよな? まさか目の前の女子生徒達は……。

「ちょっと! カケ×ミナじゃなくってミナ×サトだってば! カケ様はその2人のキューピットなの!」
「違うわよ! カケ×サトでしょ! ミナ様はみんなのアイドルであって……」
「だから! カケ×ミナってのは……」

何と、3人は私達の前で喧嘩を始めた。恐らく彼女達は腐女子で、どのCPがいいか口論になっているのだろう。

「会長さん! どれ派ですか!?」
「えっ、ん、んーと…………」

そんなこと聞かれても、答えに困るって! カケ×ミナは定番だが、ミナ×サトもアリっぽいし、カケ×サトは……禁断の兄弟愛じゃないかよ!

この中で1番は……って答えられるか! 何で全部BLなんだよ!? いや、ここで「普通に女の子との組み合わせの方が……」とか言うと、腐女子にブチ切れられる。

何と答えるか迷っていると、ついにこのお方が口を開いた。

「なるほど、どのCPが1番ベストか、占いに来たんですね?」
「や、夜宵君……!?」

彼はひっそりと笑みを浮かべていた。そ、そうだ、この人は確か、BLいける人だった……! というか、相性占い!?

「ご名答です……!」
「ま、まさか腐男子……!?」
「占ってもらえるんですか!?」

目をキラキラと輝かせる腐女子3人に、夜宵君は静かに頷いた。

「ええ、いいですよ。ただ、僕の勘なので、外れる可能性大ですが、それでもよろしいですか?」

夜宵君の問いかけに、3人はこくこくと首を縦に動かした。

そして、夜宵君は先ほどと同じように、水晶に手をかざして占いを始めた。

な、何ともすごい光景だ……。どのCPが相性バッチリかを知りに来たって……。それを真剣に占う夜宵君……。

出ようかとも思ったが、結果が気になったので、腐女子3人に紛れて私も居座ることにした。

「うーん…………」

手を水晶から離しながら、夜宵君は唸った。

「そ、そんなに難しいのか、相性占い……」
「そうだね……どのCPも、同じくらい相性がいいと思うんだ。だけど」

夜宵君は私達をゆっくりと見つめながら、話を続けた。

「今日、兵藤君……兵藤カケル君に関して、何かが……何かびっくりすることが起こりそう……!」
「兵藤君に……?」

私がそう呟くと、女子達もざわざわとし始めた。

「カ、カケ様に……?」
「まさか、カケ様がミナ様にプロポーズ……!?」
「いや、サト様に求愛するのよ!」
「…………」

再び言い合う彼女達を、私は黙って見ていた。どんだけ好きなんだ。

もし本当に兵藤君に関して何かがあれば、夜宵君の占いは当たるってことだ。





ふと、出入口を見てみると、何やら知った顔が見えた。

「あ! やよちゃん! えみりん!」
「「へいちゃん!」」

元気そうに手を振ってきたのは、何とへいちゃんだった。しかも、その隣には三波君と兵藤君の姿が……。

「な、なんてタイミングだ……!」

噂の3人が現れるとは。たった今話題になったばかりなのに。

「さ、3人ともいらっしゃったわよ!」
「私達は壁になって見守りましょう!」
「ええ! そっと見つめるのよ! そっと!」

女子3人は、興奮気味に慌てて少し離れた場所へ行った。どうやらこの3人は、離れたところでCPを見るのが好きならしい。

「お久しぶりです。ミス・エミリオとミスター・夜宵」
「久しぶりだな、2人とも」

そんな女子生徒に気づかず、男子3人はこちらにやってきた。

「久しぶりだな、みんな」
「久しぶり! 最近は準備でなかなか集まれなかったもんね!」

私は再会を喜びながらも、いつもと違うことに気づいた。

「わあ! その衣装いいね!」
「3人とも、よく似合ってるな」

夜宵君と私がそう言うと、カケミナサトは同時に照れ始めた。

文化祭のコスプレだろうか、三波君は王子様、兵藤君は執事の格好をしており、へいちゃんはドレスを着て女装していた。

これがまた全員キメているのだ。三波君は相変わらずイケメンすぎて、今も周りの女子達がキャーキャー叫んでいる。

兵藤君は顔が見えないが、スタイルがよくて、執事姿がめちゃくちゃ似合っている。

ロングヘアーのウィッグをつけたへいちゃんは、小柄なのを活かしていて、まるで本当に女の子のようで可愛い。

「私のクラスは劇をやることになっていて、私は王子役なのです」
「俺のクラスは、メイド喫茶・執事喫茶をやるんだ」
「僕のとこはね、女装・男装をしてるんだよ!」

なるほど、だからその格好なのか。どのクラスも盛り上がっているようでよかった。

「実は、その劇には王子の他に、変態王子という役もあるのですが、残念ながらじゃんけんで負けてしまい、普通の王子役となりました」
「どんな劇だよ!?」

三波君は自他共に認めるド変態だ。変態王子の役って、どんなストーリーなんだ、その劇は。





それから少し、5人で話していると、窓から強い風が入ってきた。

「うわっ、寒い!」
「今日風強いねー」

周りから次々と言葉が漏れる中、私達はとんでもないものを見てしまった。

「「ええーーー!?」」

夜宵君と私で、かなりでかい声を出してしまった。それにつられて、周りも大声を出し始めた。

「す、すげえ!」
「私、初めてかも!」
「これは超貴重!」

今、私達の目の前には…………何と、初めて見る、兵藤君の顔が…………! 強風に吹かれ、長い前髪が上がり、顔が露わになったのだ。

へいちゃんに少し似ているが、へいちゃんよりはやや大人びていて、それはもうかなり整った顔立ちだ。

「こ、これが兵藤君の顔……!」
「イケメンだ……!」

ただただ彼を見つめる私と夜宵君。当の本人は、みんなに見られた後、両手で顔をバッと覆った。

「は、恥ずかしい……! この姿、ミナとサトルにしか見せたことなかったのに……!」
「いや、スカートめくられた女子高生じゃあるまいし!」

私は彼にツッコんでみたが、よほど恥ずかしいのか、兵藤君は周りの注目を浴びながら、手を顔から離さない。

「うわー、兄ちゃんの素顔久々に見た! 僕も家族なのに、あんまり見ないんだよ!」
「同居してるのに見ないってすごいな……」

へいちゃん曰く、兵藤君の顔はかなりレアらしい。それを拝めるなんて、これが私にとっての“今日のいいこと”かな?

「カケル……あなたの顔はとても美しいです。さあ、このハンカチで顔を隠して下さい!」
「ありがとう、ミナ。……お前、香水変えたか? いつもと違う気がする」
「よくわかりましたね! 少し前に、新しいのを買ったのです」
「やはりそうか。でも、変わってもミナの香りが残ってるよ……」
「カケル……」

「おい! また2人の世界になってるぞ! 戻ってこーい!!」

私は呼びかけてみたが、2人はそれでも帰ってこない。また周りが勘違いすることを……

「きゃー! やっぱりカケ×ミナ最高!」
「カケ様の素顔、何て美しいのかしら!」
「もうこれで悔いなんてないわ!」

案の定、先ほどの腐女子3人は、大はしゃぎである。

それにしても、夜宵君はすごいな。兵藤君に関して何かが起こる……ズバリ当たったぞ。

腐女子達は、またこちらへ戻ってきた。

「すごい! さっきの占い、当たりましたね!」
「カケ様のお顔を拝見できたし、最高です!」
「あーあ、写メでも撮っとけばよかったー」

カケミナサトのどのCPが1番かはわからずとも、兵藤君の顔が見れて、3人とも満足そうだ。

何だか賑やかな文化祭。ドタバタとしているが、これくらいが私には心地よい。

ありがとう、おかげで十分楽しいよ。

外から再び風が入り込み、私の髪とマントを優しく揺らした。

< 52/ 107 >