ケータイ小説 野いちご

俺が意地悪するのはお前だけ。


 そんなアイツは、人前では愛想のいい優等生で、まわりからの信頼も絶大だったから、私が陰で意地悪されてることに気付く人は、ほぼ全くと言っていいほどいなかった。


 クラスの人気者で、女子からはモテモテ。男子からもひと目置かれる存在だったアイツと、大人しくて地味な私じゃ、周囲に訴えたところで信じてもらえないのは火を見るよりも明らかで。


 悪魔を敵に回そうものならどんな仕返しがくるかわかったものじゃない。


 助けを求めたあとのことを想像すると臆してしまって、結局誰にも言い出せないまま、長年ぐっと堪え続けていた。


「花穂」


 ふたりきりになるなり私の名前を呼んで、小さい頃からトレードマークにしている三つ編みを引っ張ってくるのが意地悪開始の合図。


 強引に振り向かされると、黒い笑みを浮かべた悪魔と目が合って、それだけでゾクリとしてしまう。


 今日は何を言われるんだろう。


 どんな意地悪をされて泣かされるのか想像しただけで頭の中は大パニック。


 悪魔を前にしただけで体が震えて、恐怖に涙ぐんでいた。


 アイツとの思い出はどれも最悪だけど……。


 その中でもひとつだけ、どうしても許せなかった出来事がある。


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