「なにしてるんだよ!」

素早く私から陸人を引き離すと、彼は陸人の顔を思いっきり殴った。

鈍い音が響き、陸人は玄関外に倒れ込んだ。だけどすぐに立ち上がり、何度も躓きながら慌てて去っていく。

「まてっ!」

織田くんはすぐに陸人を追いかけようとしたけれど、私は必死に腕を伸ばして彼を引き留めた。

「やだっ織田くん、いかないでっ……!」

陸人がいなくなった今も怖くてたまらない。

「滝本……」

だって織田くんが来てくれなかったら私、どうなっていた……? 怖くて想像することさえできない。

今になって震え出した身体を、織田くんは優しく包み込んだ。

「ごめん。……こうする方が先だった」

私を落ち着かせるように、彼の大きな手が背中や髪を撫でていく。そのたびに安心できてまた涙が溢れた。

「織田くんっ……」

彼にしがみつき、私は子供のように声を上げて泣いてしまった。

だけど織田くんは片時も離れず、ずっと私の身体を抱きしめ続けてくれた。

そばにいてくれるだけでいい。こうして抱きしめてくれるだけでいい。それだけでこんなにも安心できるんだ。

その後、なかなか私の涙は止まることがなかった。