——ヒュー

——ドーン

花火が打ち上がるたびに、水野君の横顔が浮かんでは消える。花火を見つめるまっすぐな水野君の視線に、ドキドキした。

しばし無言で観覧する私たち。

胸のドキドキを隠すようにして、たこ焼きを頬張りストレートティーを飲んだ。

ちょっとぬるくなったそれは、喉の奥を通って胃に流れこみ熱を冷まそうとしてくれる。

花火はフィナーレを迎え、連続で上がったあと最後に滝のように流れてまばらに消えていった。三十分という短い時間だったけど、あまりにも綺麗すぎて、花火が消えたあともずっと夜空を見上げていた。

どこからか拍手がわき起こり、それは次から次へと伝染していく。気づくと私も手が痛くなるくらい叩いていた。

「綺麗だったね! ものすごく感動しちゃった。ラストは鳥肌が立っちゃったよ」

興奮気味に振り向くと、なぜか二人は目を見合わせて「ぷっ」と噴き出した。

「桃ちゃん、可愛い。目がキラキラしすぎだよー!」

「花火ではしゃぐとか、子どもかよ」

今日は珍しく水野君はよく笑う。

「そんなに笑わなくても。綺麗な物を見て感動するのは、当たり前のことだと思うけど?」

少しスネたように、ムッと唇を尖らせる。

「まぁ、そうだね。私も感動したけど、鳥肌までは立たなかったよ。なんだか桃ちゃんの反応が蒼君に似てたから、思わず笑っちゃった」

瑠夏ちゃんの口から出た『蒼君』という名前に、それまで笑っていた水野君の表情が一気にこわばった。

そして気まずそうに顔を伏せる。

「桃ちゃんといると、蒼君を思い出すことが多いなぁ……」

ひとりごとのようにそう呟いた瑠夏ちゃんの声にも、だんだんと元気がなくなっていく。

水野君に蒼君のことを聞いてもいいのかな。いや、でも、なにも聞いてくれるなというオーラを放っているような……。

二人が深刻そうな顔をするから、蒼君のことが気になって仕方なくなる。

だけど、なにも聞けなかった。

「いっけない、帰らなきゃ。お兄ちゃんが迎えに来てるんだ。花火が終わったら、すぐに神社から出てこいって言われてたの」

「マジかよ、相変わらず過保護な兄貴だな」

「まぁね。怒らせると怖いから、もう行くね」

慌てて立ち上がる瑠夏ちゃんに続いて、水野君と私も同じように立ち上がった。

「桃ちゃん、今日はありがとう。とっても楽しかった! これに懲りずにまた遊ぼうね! 春ちゃん、夜道は危ないから、ちゃんと桃ちゃんを送ってあげてね! じゃあ、バイバイ」

「え、あ、バイバイ……!」

手を振って人混みの中に紛れていく瑠夏ちゃんに、私も大きく手を振った。