「まさか、後ろにいるなんて。駅、こっちじゃないよね?」

電車できたんじゃないの?

「そりゃ後ろからくることだってあるだろ。つーか、ここ俺の地元だし。家も、すぐそこだから」

へえ、家が近くなんだ?

知らなかった。

相変わらず水野君は淡々としていて、お祭りだというのにテンションは学校にいる時と同じだ。お祭りが楽しみだという雰囲気は一切ない。

まぁ、水野君らしいといえばそうなんだけど。

「なんだか久しぶりだね。毎日なにしてた?」

「べつに、ボーッとしてた」

なんだか的を得ない返事。聞かれたくないのか、水野君は辺りをキョロキョロし始めた。

「あ、お腹空いた? そろそろ回る?」

「いや、そうじゃなくて。人探してる」

えっ?

疑問が浮かんだのと同時に「あ、いた」という水野君の声が聞こえた。

反射的に水野君の視線の先をたどる。

そこにはオレンジ色の浴衣を着た瑠夏ちゃんの姿があった。ドクンと鳴る鼓動。まさか、ね。

「ごめんごめん、遅くなっちゃった!」

おぼつかない足取りで申し訳なさそうに走ってくる瑠夏ちゃん。それを迎えに行く水野君。二人は私の目の前まで仲良く歩いてやってきた。

「桃ちゃん、久しぶり! 今日はきてくれてありがとう」

「えっ、あ」

なんで瑠夏ちゃんが……?

水野君と二人きりじゃないの?
私はてっきりそう思っていた。だって、瑠夏ちゃんがくるなんて聞いてない。

「えっと、あの……今日は三人で回る感じなのかな?」

恐る恐る問いかけると、瑠夏ちゃんは一瞬キョトンとした。そして、すぐになにかを閃いたようにハッとする。

「春ちゃん……まさか、桃ちゃんに私が一緒にお祭りに行きたがってること言ってなかったの?」

「瑠夏が夏目を祭りに誘えって言うから、誘っただけだろ」

「えー、もう! ちゃんと言っといてくれなきゃ困るよ。私がいるから、桃ちゃんビックリしてるじゃん」

自分の中の熱が急速に冷めていくのを感じる。