「いつ、どこで、どうやって気になったの?」

「えー、それはねぇ」

どうやら百合菜の一目惚れのようで、入学式の直後から気になっていたんだとか。

目立つタイプではないけど地味すぎるわけでもなく、男子の輪の中でみんなの話を聞きながら、控えめに笑っている優しい人だと教えてくれた。

蓮とお似合いだと思っていたけど、彼のことを話す百合菜の優しい顔を見ていたら本気で好きなんだということが伝わってきた。

親友なら応援してあげなきゃね。

それにしても、恋愛に興味がなかった百合菜が恋をしているなんて、まったく想像してなかった。

時間の流れを感じてふと寂しい気持ちになる。

中学の時はずっと一緒にいたからなんでもすぐに話してくれたけど、もう中学生の頃の私たちじゃないんだ。

それぞれお互いの世界があって、私の知らない百合菜がいる。百合菜の知らない私がいる。

高校生になって世界が広がったのは楽しくもあるけど、もの悲しい気持ちになるのはなんでだろう。

「水野君への気持ちが桃の中で固まったら、また一緒に恋バナしようね。なにかあったら相談に乗るからさ!」

「百合菜……」

相変わらず優しくて頼りになる存在。百合菜がいてくれるだけで、とても心強い。

でも、私の中ではまだ気持ちの整理がつきそうにない。

「ま、ふとした時に好きだと気づくこともあるしね。こればっかりは本人次第だからがんばって!」

「がんばってって言われてもねぇ」

「ごめん、私、そろそろ塾だから行かなきゃ」

「え? あ、もうそんな時間?」

まだまだ話し足りなかったけど、名残惜しく家に帰った。