パラパラと教科書をめくってみる。たしか前の授業はこの辺で終わっていたはずだ。

高校に入ってから勉強が難しくなったことに加えて、科目も増えて覚えることがいっぱい。

夏休み前だというのに、その前にテストがあることをすっかり忘れてたよ。

「夏目ー、ほら、前に出てやってみろ」

ううっ。

助けを求めるようにチラリと水野君を見る。

「ったく、なにやってんだよ。マジでバカだな」

小さなため息とともに、悪態をつかれた。

はい、そうですね。自分でもわかってます。実際、テストも蓮に泣きつかなきゃ乗り越えられないだろう。

正直、授業についていけてない。だから、余計に焦る。

うつむき気味に肩を丸めて小さくなっていると、ガタッと椅子を引く音が聞こえた。

どうやら水野君が立ち上がったようで、スタスタと黒板の前まで歩いて行く。

そして、チョークを掴んだ。ザワッと騒がしくなる教室内。

水野君はスラスラと黒板に数式を羅列して問題を解いていく。

「夏目さんが当てられてたよね? なんで水野君が?」

「かわいそうで、見てられなかったんじゃねーの?」

「水野君って、そんなタイプに見えないけど」

ヒソヒソとみんなが話す声が聞こえてくる。

一匹狼で誰とも仲良くなろうとしない水野君が、私を助けたことでクラス中に衝撃を与えたらしい。