少し前に。



この街に、野獣と呼ばれた男がいた。


その男は誰よりも強く、気高く、誰をも魅了する男であった。

彼は金曜の夜、自分よりも遥かに多い量の人と喧嘩をする。

人々はその喧嘩を傍観し、関わりたくないと思いながら、喧嘩を見ることをどこか楽しんでいた。


結果はどうせ決まっている、野獣と呼ばれるその男が勝つのだ。


彼に喧嘩を挑んで負けたものは底知れず。


誰もがその男に憧れると同時に恐れ、怖がり関わることのないようにと生きた。



そんな男に女が出来た。


どこで出会ったのか、その女が誰なのか、部外者は決して知ることができなかった。



それほど男は女を大切にしており、男が一生を共にすると決めた女だった。



しかし、彼女は。






ある日突然、姿を消した。