……三崎慶一郎。

それは、さっきまでこの車を運転していた人物以外の何者でもない。


「黒蘭の創設者は、本多元就(ほんだ もとなり)。……これが、本多の曽祖父にあたる人物。つまり本多七瀬は黒蘭の4代目──になるはずだった」


ひと呼吸おいて中島くんは続ける。


「だけど、本多の父親の代に黒蘭は崩壊した。原因は俺も知らない、けど、確かに黒蘭はこの街から一度消えた」

「……それを、慶一郎さんが立て直したの?」

「簡単に言えばそうだけど、”乗っ取った”って言い方のが合ってるかもな」


そこまで言うと、中島くん落ち着かない様子で窓の外に目を向けた。


慶一郎さんがまだコンビニから出ていないことを確認したらしく、ふう、と肩を吐く。

こんな話、当人に聞かれるわけにはいかないだろうから。



「復活はしても、本多の一族が支配してた黒蘭はもう存在しない」