「早くしろよ、恥ずかしいんだから」


¨来い来い¨と、お兄ちゃんがしゃがんだまま手だけを動かしている。



それは、おぶされってことだよね?
え…お兄ちゃんに?
いや、お兄ちゃんだからいいのかもしれないけど…
体重とか、私の臭いとか…


「もういいから」

「!」

そんなことを考え躊躇していると、お兄ちゃんが痺れを切らし、まるで背負い投げをするかのように私を背負った。



「きゃっ」


急に地面から高くなる視界に、恐怖さえ覚える。



「お前待ってたら、日が暮れる」


¨よいしょ¨と言い、お兄ちゃんは背負い直した。


「帰るぞ」

「~っ」


お兄ちゃんに背負われてることが恥ずかしくてしょうがないが、お兄ちゃんはそんなことを気にする様子もなく駅に向かって歩き出す。







「重くない?」

目の前には、お兄ちゃんの後頭部。
こんな近くで、私よりも身長が高いお兄ちゃんと同じ目線になることは、普段は絶対にありえないこと。


「重いよ」


私の質問に、短く返ってくる返事。


「恥ずかしくない?」


段々、駅に近付いているため人通りが多くなってきている。

すれ違う人のほとんどが、ジロジロと私たちを見ていく。



「恥ずかしいよ。恥ずかしいけど、しょうがないだろ」



ぶっきらぼうに言ったお兄ちゃんだけど、さっきの心配した表情を思い出すと、照れ隠しなんじゃないかと思ってしまう。

私の勝手な想像だけど…