「これ、お義母さんの嫁入り道具だったらしいのよ。」

そんなに名残惜しいなら持っていけばいいのに。畳1枚分のスペースあったら置けるぜ?

「でも、私の箪笥もあるのよねぇ」

そりゃいらんわ。
奥様は引き出しを出したり直したり、扉を開けたり閉めたりし始めていた。
よしよし、家に入ってからずっと奥様が付いて回ってたからな
この隙に、よろしげなものを物色しとこう

私は手始めに今までいた寝室のクローゼットを開けることにした。

「奥様ー!クローゼット開けますよー?」

いまだタンスに心奪われている奥様に一応、声を掛けた。

「いーわよ!好きにして!」

奥様がこちらを見ずに答えた。