「--そういえば、なんでベッド作り直してないんですか?」

「ん?」
社長が首を傾げた。

「軋みです。ひどいですよ。身体を動かすたびにギシギシって。あれじゃうるさいでしょ?私のせいなんですけど、一部分直すだけで軋みは解消されるでしょうに。どうして直さないんですか?」

「ああ、あれか。
いいだろ?あれも味があって」

「ベッドに求めるのは味より快適さだと思いますよ。あんなに軋んだら睡眠の邪魔になりませんか?」

「ならないな」
社長は笑顔でビールを飲み干した。

「私が悪うございました。だから直しましょうよ」
私は懇願した。だってこんなに軋むなんて知らなかったから。

一年前に社長が自分のベッドを制作しているのを知ってしまった私が隣で見ていてどうしても手伝いたくなってしまって、手を出してしまった。

・・・結果、軋むベッドが完成した。

「完成当初はここまで軋んでなかったのに」
「1年も使ってれば歪んでくるさ」
「だから、直してってば」
「いいんだ。俺は気にならない」
「社長が気にならなくたって一緒に寝る人は気になるはずだからーーー」

「このベッドを使うのは俺だけだ」

社長の真面目な声にハッとして視線を上げた。

ここには社長の秘密の彼女さんは泊まっていない?
嬉しいような気持ちの反面、胸の奥がざらざらする。

社長が長い間大切に守っている彼女さん。
私は会ったことがないその人を守るために私はいつも社長のそばにいるーーー