「だからすごいとこの人間と知り合いなんだなって言ったんだけどね」
苦笑する下北さん。

「知り合いっていうか・・・。住宅展示場のB区画にできる新規の住宅の設計をしたらしいんです。さっき向こうでお会いしました。建築するのがイイダ建設だったんで設計もイイダの人間がしているんだと勝手に思ってました。彼、イイダの人じゃなかったんですね。
それに私が知っていた頃はその人ゼネコンにいたんですよ。転職したこと知らなかったんですみません」

だってあの小野寺って女性も櫂のことを「わが社の設計担当」って言ってたからてっきり同じ会社なんだと。
名刺見てないし。

とにかく私の勘違い。

でも、やっぱり櫂に連絡するつもりなど微塵もない。
あっちだっていまさら私にたいした用事があるとは思えない。

それに、仕事がらみじゃないだろう。私との縁を利用して仕事をとろうだなんて思ってないだろうから。
向こうは引く手あまたな設計事務所。
どっちかと言えば、私が頭を下げて仕事をもらいに行く立場だ。