ケータイ小説 野いちご

嘘のような架空の話

私にキグルミを持たせた受付嬢は何を言うこともなくデスクに戻っていくと、引き出しから青々とした草を取り出し私の目を見ながらムシャムシャと無表情で食べ始めた。


逃げなければ!

やっと思ったのはそうだった。
勢いのまま振り向くとまた、私は動けなくなった。
 後ろの光景が溶けていたのだ。すべての色の油絵の具を視界いっぱいに広げて混ぜたようになっている。
うさぎ小屋の入り口も、私の車もいつもの道路すらもドロドロに混ざってしまっていた。
叫びが声にならない。



 反射的に周りを見回す。溶けた風景から薄暗いうさぎ小屋、デスクの受付嬢。すがるように私は受付嬢を見る。
 例の受付嬢は無表情で自分のキグルミの毛を引っこ抜いてはデスクの上に積み上げていた。それでも、顔は私をまっすぐ見たまま

 いつしか引き抜いた毛はデスクの上で山になり受付嬢と私の視界を隔てていたが、そんなのは関係ない。


まだ、彼女は、私を、見ている…



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