しかしそんな彼女でもどうしても避けられないことがあった。

小母は何故か学校に行くことを強制する人で、学費もすべて工面してくれた。

まるで物のようにアリスを扱うのに学校にだけは行けという。
不思議でならないが何か理由があるのだろう。

なのでアリスは学校に行かなければならなかった。


授業は全て楽しいと思えたし、成績も優秀でトップクラス。
決して学費を無駄にするようなことはしまい、と心に誓っていた。

しかしたった一つ嫌なことがある。

それは・・・


「あら、アリス・ヴァレンタイン。今日も素敵なお洋服着てるのね。
ここにトマトスープの染みができててよ。」


そう言うとクラスの女の子が皆クスクスと笑い出す。


このいつもアリスに嫌味を言うのが、ヴァネッサ・イーディスとその取り巻き達だった。

ヴァネッサの家は資産家の大金持ちの家で、彼女に逆らえる人間はこの学校にはいない。
唯一逆らうのがアリスだけであった。

頭にきたことは何度もあって、どうしようもなく我慢できない時は物に当たった。
その度に何度も反省文を書かされた。


何故、窓ガラスを割ったのか。
何故、机を窓から放り投げたのか。
何故、ロッカーがへこむまで蹴り続けたのか。

そんなことはわきりきっているだろう、と何度も問いたかった。
くだらない反省文を書かせるより、あの女を退学させろと心の中で叫んだ。

アリスにはそうすることしかできなかった。


喧嘩っ早いのは昔からだった。
自分を捨てた親はもしかしたら暴力的な人間だったのかもしれない。

そう思って握りこぶしを見つめることが多々あった。



 しかしある日、突然にして不運はやってくる。

アリスはついに憎きヴァネッサに手を上げてしまった。




それが運命の分かれ道だった。