「ねえ、お母さん」

お母さんが「なあに」とわたしを見る。

「人生失敗なんて言われると、悲しい」

わたしの言葉に、お母さんがはっとしたように目を見開いた。

「今の生活を全部否定してるみたいに聞こえる」

わたしたちが生まれたことまで間違いだったと言われているようで、やるせなくなる。

ゆっくりと身を起こして、「ごめん」とわたしを抱きしめる。

「ごめんね……。そんなつもりじゃなかったのよ。私、こういうのばっかりね。いつも言葉の選び方を間違っちゃう。きついことばっかり言っちゃう。反省するわ」

うなだれたお母さんの背中をぽんぽんと叩くと、お母さんは「どっちが子どもか分からないわね」と笑った。

そして顔を上げて、晴れやかな笑顔で言う。

「お父さんと結婚できたことと、遥と悠に会えたことは、私の人生の大成功だわ」

その言葉が嬉しくて、わたしは何度も頷いた。

「進路のことは、お母さんと一緒にゆっくり考えよう。具体的な職業を決めるのがまだ難しいなら、とりあえず大学に行っておけば選択肢は広がるもんね。仕事に直結しなくてもいいから、四年間勉強しても苦にならないような学部を選べばいいのよ」

「うん、そうだね」

「お母さんも色々調べたり協力するから、冬休みを使って考えようね」

「うん、ありがとう」

わたしはお母さんにぎゅっと抱きついた。

それからお母さんは、「お父さんに謝ってくる」とリビングに入っていった。

たまには夫婦水入らずにしてあげなきゃね、と微笑ましく思いながら、わたしは自分の部屋に戻った。