え?

「褒める時は「褒めますよ〜」と事前に知らせてくれるのでは?」

 不平を訴える倉林支社長は口元に手を当てて、その指先までも長くて綺麗で……って、そんなことは今、どうでもよくて。

 口元に手を当てて、困ったような表情の倉林支社長は照れたような顔をして、ほんのり耳を赤くさせていた。

 意外。意外過ぎる。

 褒められ慣れていて「ありがとう。よく言われる」くらい軽く言われても驚かない。
 というより、そっちのイメージだ。

 大人の紳士代表!みたいな人に照れられるとグッとくるものがあるなんて知らなかった。

 しかも拗ねたような声がまた……。

「西村さんだって可愛いからね。」

「フフッ。なんですか?
 そのついで褒めみたいなの。」

 居心地が悪そうに目だけ逸らした彼は子どものようなことを言った。

「私だけ照れているのが恥ずかしくて道連れにしようという魂胆。」

「魂胆見え見え。」

 フッ。フフッ。

 顔を見合わせると笑い合った。

 彼の前で初っ端に無様な姿を晒したんだ。
 今さら格好つけることもない…か。

 まだまだ緊張感はあるものの、笑い合える関係に心地よさを感じた。