それにしても、またストーカーだと思われてる?
あれだけ否定したんだもん、それはないよね。
でもどうして行く先々で会っちゃうんだろう。
とことんついてないや。
「春ちゃん……ごめんね。余計なこと、言っちゃった。でも、私はやめないでほしいと思ってる」
水野君はしばらく私を見ていたけど、女の子の涙声につられて私から視線を外した。
「……ごめん」
しばらくしてから絞り出されたその声は、クールで淡々としている水野君のものだとは思えないくらい、とても苦しげで切なげなものだった。
彼女の前だと感情表現が豊かで、学校にいる時とはまるで別人だ。
水野君にも人間らしい感情があったのかと関心する。
すすり泣く女の子のことが気になって、なんだかそわそわしてしまう。
「泣くなよ。な?」
「うーっ……だって」
「いい加減泣き止めって。そろそろ始まるぞ」
こんな風に誰かに優しく声をかける水野君を私は知らない。
当たり前だ。私は水野君のことをほとんど何も知らないんだから。
知りたいとも思わなかったし、知ろうとも思わなかった。
むしろ関わりたくないとさえ思っていた。
思わず横目にちらりと見ると、唇を噛みしめながら女の子の背中を撫でる水野君がいた。
まるで何かを悔やんでいるかのような表情。
こんな顔、見たことない。
なぜだかわからないけど、胸が締めつけられた。
「ごめんね……っ、もう、大丈夫」
そう言って無理やりニコッと微笑む女の子。
もう大丈夫と言いながらも、女の子の声は震えている。
強がりだってことは一目瞭然。
女の子がパッと顔を上げた瞬間、水野君は口角を持ち上げて優しく微笑んだ。
さっきまでの苦しげな表情は一瞬にして消え去り、何事もなかったかのよう。
映画が始まった。
映画の内容自体は泣ける要素がたくさんで、胸キュンやドキドキもあってとても面白かった。
でも、だけど。
あれほど観たい映画だったわりに、ストーリーに集中して観ることができなかった。