いや、きっといつもはサキと一緒だったから二人でいれば時間なんて一瞬のように感じていたからだ。

海に行く前に駄菓子屋さんでラムネを買った。

今日はなにも考えずにただ思い出に浸ろう。


泣いてもいい。
何度思い出して辛くなってもいい。

それがきっと私だけの恋なんだから。


苦しくても辛くても嫌いになれないならそれはもう好きだと心が言ってるんだと思う。

しばらく歩いて視界いっぱいに広がる澄み渡る青に思わず息を呑んだ。太陽の光で反射してキラキラと宝石のように輝いていた。


「……綺麗だなぁ」


いつも二人で並んで座っていた堤防に腰を下ろす。

堤防がやけに広く感じるのは左側が空いているからどろう。

そっと瞼を閉じてすぅ、と息を吸う。

潮の香り、髪の毛をなびかせる心地のいい風、ザーザーと打っては返す波の音、すべてが私の中にするりと入っていく。

そっと瞼を持ち上げると眩しいほどに光る青い宝石のような海が広がっていた。

少しだけ切なく胸が疼いた。

ポケットから小さなピンク色の巾着を取り出した。

私の大切なものが入っている。

中からビー玉を取り出す。このビー玉は他の人にはただのビー玉にみえても私にとってはそうじゃない。

サキがくれたものだから。

そしてサキも私があげたビー玉を持っている。

今はもう捨ててしまっているかもしれないけどね。