リリアは驚き、頬を赤らめもしたけれど、オルキスへと大人しく自分の身体を預けた。

頭上にあったはずの太陽は、少しずつだが傾き始めている。

すっかり日が暮れた頃にはもう、自分の隣りにオルキスはいないのだと考えると、リリアの顔は寂しさで沈んでいく。


「ねぇ、オルキス。あなたにはどこに行けば会えるの?」

「……俺はだいたいジャンベル城にいる」

「ジャッ、ジャンベル城!?」


想像すらしなかったオルキスの返答に、リリアは弾かれたように視線を上げた。

しかし目と目を合わせ数秒後、オルキスがセドマの元へと訪ねて来た理由を思い出し、リリアは「あぁ」と小さく呟いた。


「そうよね。オルキスは父をジャンベル騎士団に誘いに来たんだもんね……ってことは、オルキスは騎士団の一員?」

「……まぁ、そんなところだ。騎士団の指揮は俺がとっている」

「そうだったんだ。やっぱりすごい人だったのね」


彼の目的と見事な剣捌きから、オルキスが騎士団員だとすぐに気づけたはずだった。

しかしリリアの中で騎士団といえば、例えばセドマのように、屈強な見た目の男たちの集まりだと思い込んでいたため、どうしてもオルキスの持つ品の良さや優雅さと結び付けることができなかったのだ。